Earn Out


企業価値評価とEARN-OUT(アーンアウト)
A way towards successful corporate Acquisition

 

アーンアウト(Earn-Out)とは

アーンアウト(Earn-Out)とは聞きなれない言葉であるが、企業買収において被買収企業従業員の離散や 顧客、取引先の喪失などの買収リスクを低減化する目的で行なわれる企業買収に伴う株式買取方法の一種である。アメリカでは特に経営者(や持株会)が主要株主である場合に行われる。

 法務上は、M&A契約において一部の対価の支払いを一定の条件が成立したことを条件に行う売主及び買主の合意をいう。
売主が約束したとおりに対象事業が業績を上げることが確認できるまで、買主はそれに見合った対価を支払わないとする約束のイメージである。
アーンアウト条項が採用されるのは、売却の対象となる会社が非公開会社である場合である。多数の株主を有する上場会社等を対象会社とするM&Aにおいては、通常アーンアウトが採用されることはない。

つまり、企業の買収や統合を行うに際して、その企業に要求される目標を達成するために一定期間、旧経営者に経営を委託することである これにより顧客や従業員をそのまま承継し、買収企業の意図に沿った経営体質へ時間をかけて変更することができる。 それを実現した暁には企業価値が上昇した分だけ割り増しが旧株主(経営陣)へ給付されることになる。

 

アーンアウト(Earn-Out)と企業価値評価

M&Aの対象となる会社の事業は、その将来の業績見込みや保有財産などをもとにその価値が評価される。 そして、価格交渉もそのような対象事業の将来の業績見込みを念頭において実施されることとなるが、評価対象を将来まで広げるかについては双方の合意事項である。
たとえ合意がなされても事業の業績見込みについては、売主と買主との間で評価に大きな差異が生じることもしばしば見受けられる。自らの事業を熟知する売主による将来の業績予測は、投資の効率性を慎重に評価する買主からは楽観的に見えることは珍しくはない。逆に、買主の慎重な業績評価を見て、自らの事業の価値が正当に評価されていないと感じる売主は珍しくはないであろう。
そのような認識の相違は、M&Aの対象となる事業が将来どのような業績を達成することができるのかについての評価の違いから生じている。 そこで、アーンアウト条項においては、対象事業の価値評価の鍵となる指標を特定し、対象事業の売却後における一定の期間(1年から数年程度)において、対象事業が一定の業績を上げた場合には、売主は買主に対してそれに見合った支払いを行うと約束する。
すなわち、案件成立か、それとも価格について歩み寄ることができなければ案件不成立かの場面において、売主及び買主が、売却の対象となる事業が将来一定の期間に定められた業績(典型的には売上高やEBITDA等)を達成した場合には、買主は売主に対して所定の金額を支払う、と合意することにより売主と買主間の価格評価に関するギャップを埋め、M&A取引を成立させることを可能とするのである。
このような合意により、買主は、買収の対象となる事業が所定の業績を達成しなかった場合、更なる対価を支払う必要はなく、高い買い物をする危険を避けることができる。また、売主は、売却の対象となる事業が実際に所定の業績を上げた場合には、それに見合った対価を取得することとなり、受領する買収対価を売却事業の価値に見合ったものにすることが可能となる。
日本においてはこのようなM&A手法がどの程度活用されているかは不明であるが、M&Aにおける買収契約書の開示が一般に要求されているアメリカでは、以下の理由で多用されている。
 それでは、日本においてアーンアウト条項がアメリカほど利用されていない理由はどこにあるのであろうか。
 ・第一に、アメリカではアーンアウトがM&A取引における利用可能な選択肢の一つとして広く認識されている。
 ・第二に、企業価値評価が極めて一般的に行われ、かつ複雑な契約を交渉することを厭わないアメリカの交渉慣例。
 ・第三に、アメリカでは、買収後においても対象会社の株主でもあった旧経営陣が引き続き経営に参画する場合が見受けられる。この場合、買主としては売主に対象事業の経営を委ねる必要性が高く、売主としては一定程度アーンアウトの条件成就に関与できるため、売主及び買主双方の合意が得られやすい、という事情があるのかもしれない。

 

アーンアウト条項における留意点

 売主と買主の事業の価値評価に差異がある場合において、アーンアウト条項は有効であるが万能薬ではない。アーンアウト条項を採用する場合に留意すべき典型的な事項は以下のとおりである。

アーンアウトにおける指標:財務指標
売主及び買主の双方の利益を適切に調整するアーンアウト条項を作成するためには、適切な業績指標を選択し、合意することが必要となる。そのような指標は、売上げやEBITDAといった財務指標であることが多い。しかし、アーンアウト契約所定の財務目標が達成されるのは、対象事業の売却が完了し、買主が支配権を取得した後である。アーンアウト条項に基づく支払いの条件は、買収完了後一定期間において対象事業が所定の財務目標を達成できるか否かであることが多いが、買収完了後、買主には、アーンアウト条項に基づく支払いをなくし、又は支払額を低下させようとするインセンティブが働く。そこで、売主は、財務目標の達成の可否が買主により操作されることを防ぐことが必要になる。買主を信頼することができる状況であれば、買収契約に特段何も規定しないという選択肢もありうるが、買主は、アーンアウトの評価期間中はこれまでの慣例に従い事業を運営するとか、売主のアーンアウトの権利を侵害することを目的とする行為は一切行えない、という趣旨の規定がおかれることもある。逆に買主としては、対象事業を自由に運営する権利を明確に確保できるかが課題となる。これは、買主が対象事業の支配権を取得したとしても、契約上、対象事業の経営に関する買主の権利が制限されたり、売主が買収後も対象事業の経営に参画する場合において相当程度の経営権を確保していれば、買主は、買収完了後において対象事業を自由に経営できなくなるためである。

アーンアウトにおける指標:他の指標
 これに対して、財務指標は採用せず一定の事実の発生をアーンアウト条項に基づく支払いの条件とすることがある。例えば、対象事業が医薬品の開発に従事している場合に新薬の認可の取得をアーンアウトの条件とする場合である。M&Aの対象となる事業において、このようにアーンアウトの条件として適切な事象が存在しない場合もあるものの、存在する場合には、アーンアウト条項を簡潔でありかつ当事者双方の期待にかなったものとすることも可能である。

アーンアウトの評価期間:
評価期間が長くなればなるほど、売買契約の交渉時点では予測していなかった事情が発生する可能性が高まることになる。そこで、アーンアウト期間は適度に短く設定する必要がある。アメリカにおける2008年の例では、アーンアウトの評価期間を3年以内としている例が全体の69.5パーセントを占めている。アーンナウト(Earn-Out)とは聞きなれない言葉ですが、企業買収において被買収企業従業員の離散や 顧客、取引先の喪失などの買収リスクを低減化する目的で行なわれる企業買収に伴う株式買取方法の一種です。特に経営者(や持株会)が主要株主である場合に行われるケースが多いようです。 


アーンアウト EARN-OUTの実際
Process and Agreements

M&Aを含む企業統合あるいはグループ化は、目標設定と目標を達成するための統合活動(PMI、Post Mreger Integration)を合意し、それを達成するための(法務的、人的、組織)制度と統合へ向けたロードマップを作製しそれに沿って推進していく。
このため企業の持ち主(株主)が同一であれば、同一の目標を共有しやすいため迅速な対応が可能である。
しかし、全く出自の異なる企業統合の場合は、当該企業の資産並びに事業文化を引き継ぐことにるので、双方の信頼関係の構築と統合(後)の考え方など事前に合意しておかねばならない事項が多数ある。
しかし基本的な事項について以下の掲載する。

Process to PMI

  1. M&Aの申し入れ(例): Expression of Interest
    事前の打ち合わせに基づいて、細部の情報を交換して交渉を進めるか否かの決断を行う。ここで今回のディールの全体像が交換される。

  2. 秘密保持契約締結: Non Disclosure Agreement
    両社で交渉を継続する意思が確認できた段階で、今回のディールについて情報交換を行う際の守秘義務契約を締結する。秘密保持契約は民事上の契約であり、違反が発覚した場合は相手方へ差し止めや損害賠償を請求し、折り合わなければ民事訴訟で決着をつける形となる。

  3. 企業評価(項目例): Due Diligence
    守秘義務契約締結後に今回のディールの詳細を合意するために細部にわたる資料を交換する。資料に漏れがあったり、資料交換後契約締結時までに事態の変更についても検討事項に加えられる場合がある。

  4. 株主間契約書(基本合意書): Shareholders' Agreement (Memorandam Of Understanding)
    両社で合意した内容を株主間契約として締結する。 大型取引の場合は情報開示の観点から概要を基本合意書(MOU)として早期に締結する場合や、 またこの契約締結に併せて、必要とされる各種業務提携契約などを締結する場合もある。

M&Aの申し入れ項目例
Expression of Interest

M&Aや統合について両者の考えが出そろった段階で、具体的な統合交渉へ向けた方針を両者で合意し、進めるために交換されるのが「Expression of Interest(興味の表明)」である。 一般的には、法的拘束力のないケースが多いといわれるが網羅される要素は下記の通りであり、合意されれば、これらの要素を今後双方で詰めていくこととなる。

  • Nature of Acquisition :「企業買収・統合の概要・仕組み」
  • Purchase Price: 「企業評価額と支払い方法」
  • Employment Terms:「幹部社員の再雇用条件」
  • Adverse Change:「重大な事態の変更」
  • No Disclosure:「非公開、守秘義務」
  • Exclusivity:「優先交渉権」
  • Due Diligence:「企業評価」
  • Transaction Costs:「本取引にかかる費用負担」
  • Governing Law:「本取引が準拠する法令地」
  • Counterparts:「写し、副本」
  • No Publicity:「開示」
  • Authority:「権限」
  • NONBINDING:「法的な拘束力」

 

企業評価項目例
Due Dilligence

買収金額を合意するにあたって大きな課題がある。 それは①企業価値(評価額)、②(事業成長)収益性、③(人材・顧客)安定性などである。このうち①については、評価のための主要リストが公開されているが、その外については両者で相互に課題を詰めていくことになる。 その際に重要なのがPMI(事業統合の進め方)との兼ね合いである。上記①についての概要は次の通りであるが、詳細を両者で詰めることになる。その際に課題となる可能性があるのが、譲渡に関する税法上の観点であるので、少数精鋭のチームを組み周囲の専門家を巻き込んだ体制づくりとそれを集約する能力が必要とされる。

  • 組  織  Corporate Organization, Regulations
  • 株  式  Shareholders
  • 重要な契約  Important contracts/Agreements
  • 資  産  Assets(BS/PL)
  • 知的財産権  Intellectual Property Right
  • 従業員および役員  Employees and Officers
  • 規則遵守  Compliance
  • 保  険  Insurance
  • 訴訟および紛争  Litigation
  • 環境対策  Environmental Measures
  • 上場企業においては別途詳細な規定(日本においては金融商品取引法等)や、株式を対価として譲渡することも考えられるので法務のみならず会計・税務の専門家の協力が不可欠である。


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